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特定非営利活動法人 設立趣旨書

特定非営利活動法人キャズ

設立代表者 笹岡 敬

 近年、様々な情報伝達手段が発達し、あらゆる事象が多様化する中において、アートの在り方も同様に変化している。各地には多数の美術館が建設され、多くの美術に関するイベントが行われ、それに関する情報もあふれるとともに人々がアートと親しむ機会はますます増加している。

 しかしその一方で現代アートは「観る人」「造る人」「見せる人」というそれらの人々の役割ごとでアートに対する関係が分断化されており、そのことでアートが持つ社会的機能を充分に果たしていないのではないだろうか。

 特に「観る人」の日常において、「造る人」「見せる人」は非常に遠い存在であろう。近年、美術館においてもワークショップやアーティストトーク等、「造る人」「見せる人」と「観る人」との距離を埋める試みは盛んに行われるようになっている。しかしそれらは館の教育プログラムの一環であり、アートが成立する現場を共有するという意味合いで行われているものではない。他の分野、たとえば音楽はコンサートに限らず様々なメディアにより日常的に楽しまれ、我々の生活において非常に身近な存在となっている。しかし現代のアートは、限られた人達が、美術館で鑑賞したり、ギャラリーで購入するものとなり、「造る人」「見せる人」と接する機会もほとんど無い。次に、「見せる人」である企画者は、美術館やギャラリーなどが従来から持つマーケットや行政の制度的な制約を受けてしまい、自由に企画し難い現状がある。また、「造る人」であるアーティストは、社会から隔絶されたともいえるアートシーンの中で作品を造り、そこでいかに生き残るかという事に労力をつぎ込み疲労している。

 そこで、新たなシステムによる非営利の展覧会を設定することにより、「見せる人」は既存の制約にとらわれない自己表現としての企画ができ、「観る人」は単に展覧会を観るだけではなく、展覧会そのものが成立していく過程から「造る人」「見せる人」との関わり合いを持てる一方、そこでのコミュニケーションや作品鑑賞を通じて、現代社会におけるさまざまな事象や課題、価値観等を享受、共有することがより可能となる。これらにより、現状の三者が分断されている関係を打開し、生き生きとしたアートの現場を育成することによって、アートがアートに関わる人達だけのものでなく、多くの人達が社会を内省する契機となることを目指す。

 以上のことから、公共性の高いアートの育成には、従来の行政や、市場主導型では不充分であり、民間からの生活に密着した環境や場の育成が必要になる。それには非営利によるボランティア活動を軸にした、あらゆる立場のアートを愛好する人たちで構成される活動の存在が必須である。

 これらの目的を達成するには組織のNPO法人化が必要である。そのことで、組織の更なる自主的・自発的な運営をし、参画者に責任の自覚を促すことで、民間主導のアート環境を育成する。また、自らの存在を社会に広く知らしめ情報公開することで、公平で開かれた参画が可能な運営を実現する。そうして非営利活動への理解と社会的認知を高め、支持を拡大することで安定した支援体制を確立し、中長期計画にのっとった発展的な活動を目指す。

 以上、これらのことを実践するために、ここに、特定非営利活動法人「キャズ」を設立するものである。

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