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アウラの行方

國府 理、末永 史尚、冨井 大裕

キュレーション:藤井 匡(東京造形大学 准教授)

協力:アートコートギャラリーYUMIKO CHIBA ASSOCIATESMaki Fine Arts

■会期 2016年9月17日(土)~10月8日(土) 14:00-19:00 月・木休み

  • オープニングトーク:9月17日(土)17:00~¥500(1ドリンク付き)
    末永 史尚(出品アーティスト)
    冨井 大裕(出品アーティスト)
    江上 ゆか(兵庫県立美術館 学芸員)
    藤井 匡(東京造形大学 准教授)
  • クロージングトーク:10月8日(土)16:00~ ¥500(1ドリンク付き)
    小林 公(兵庫県立美術館 学芸員)
    牧口 千夏(京都国立近代美術館 主任研究員)
    藤井 匡(東京造形大学 准教授)
    笹岡 敬(アーティスト、CAS 運営委員長)

写真

イメージ:國府 理 《Natural Powered Vehicle》(映像)

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ボリス・グロイスは「インスタレーションの政治学」で、ベンヤミンの「複製技術時代の芸術作品」に基づいて芸術作品の地位を考察している。ベンヤミンの時代と異なるのは、現代が芸術の大量生産時代であることだ。それは、非常に多くの人間がSNSに自身の作成したテキストや画像をアップロードする状況のことを指す。そうした情報は、複製技術に立脚するために、基本的にはアウラを持たない。その一方で、美術インスタレーションにはこうしたテキストや画像が多く引用される。本来的にはアウラを持たない情報は、美術の制度と場所に投げ込まれることによって新しくアウラを獲得することになるのだ。

 

ここで重要なのは、インスタレーションという場所が、情報が大量流通する一般的な場所と美術館という特権的な場所の中間に、両義的に位置することである。その場所はアーティストによって制作され、さらに美術制度によって保障されるとしても、その中に完全に収まるわけではない。インスタレーションが大量流通する情報にアウラを与えるとしても、それは一過性のものである。加えて、その情報が一般的な場所で大量流通し続けていることがそのアウラを曖昧なものに思わせる。そもそも、文脈の問題さえ除外すれば、両者を区別することは基本的にはできない。インスタレーションが与えるアウラは、情報の大量流通という現実に常に脅かされ続けている。

 

私は前回、展覧会の会場を、ホワイトキューブという超越的な場所と建築に帰属する世俗的な場所のふたつが重層化したものとして考察した。そこで理解したことは、美術という制度がその中にあるものを美術作品として位置づけるという意味は、そう単純な話ではないことである。当たり前のことだが、制度を問い直せば、その中に置かれるものが美術作品であることも疑わしくなる。逆説的だが、美術の制度は、美術作品が美術作品として認定されていることを前提とするのだ。ここからは、美術作品として自明ではない美術作品から再出発するという異なったアプローチの必要性が見えてくる。社会の中を大量流通している情報から切断不能なインスタレーションを考察の起点にするのである。

 

今回の展示によって、大量流通する情報との視覚的な同一性と差異性が浮上してくることを予期している。そのことを通して、美術作品と美術のための空間を、美術制度を、その中にいる私たち自身を再考できると考えている。

 

藤井 匡

國府 理 KOKUFU Osamu

1970年京都府生まれ。
1995年京都市立芸術大学大学院彫刻専攻修了。
2014年永眠(享年44)。
「KOKUFUMOBIL」シリーズをはじめ独自の設計思想で移動手段の実用枠を超えたユニークな乗り物を制作。2000年代後半より植物や生態系を組み合わせて機械・自然・人とが融合・対立・循環するメカニズムを考察しながら、自然の営みと機械文明に埋もれる現代から未来を模索する作品を発表。
近年の主な個展に「相対温室」(国際芸術センター青森2014)、「未来のいえ」(西宮市大谷記念美術館 2013)、「ここから何処かへ」(京都芸術センター2012)、「水中エンジン」(アートスペース虹、2012「KOKUFUMOBIL 回転する歯車は並行世界の夢を見るか?」(チカエコダ、2011)、 「Parabolic Garden」(アートコートギャラリー、2010)。
主なグループ展:「あいちトリエンナーレ2013」(愛知2013)、「TRA: Edge of Becoming」(ヴェネツィア2011)、「神戸ビエンナーレ2009 招待作家展 LINK  しなやかな逸脱」(兵庫県立美術館、2009)。


「Natural Powered Vehicle」(写真)
2005年 撮影:豊永政史

冨井 大裕 TOMII Motohiro

1973年新潟県生まれ、神奈川在住。
既製品に最小限の手を加えることで、それらを固定された意味から解放し、色や形をそなえた造形要素として、「彫刻」のあらたな可能性を模索する。
近年の展覧会に「カメラのみぞ知る」 (Yumiko Chiba Associates viewing room shinjuku、東京、2015)、「引込線2015」(旧所沢市立第2学校給食センター、埼玉、2015)「アーティスト・ファイル2015 隣の部屋-日本と韓国の作家たち」(国立新美術館、東京、韓国国立現代美術館、ソウル、2015-16)。また、2008年よりアーカススタジオにて、作品が朽ちるまで続く実験的な個展「企画展=収蔵展」を開催、Twitterにて毎日発表される「今日の彫刻」などと併せ、既存の展示空間や制度を批評的に考察する活動でも注目を集める。
「壁ぎわ」世話人


今日の彫刻(110908-150531)
2011年ー
モニターにスライド画像1223枚(20:23)
*モニター制作、画像編集協力:HIGURE 17-15 cas
国立新美術館(東京)でのインスタレーション風景
撮影:柳場大

末永 史尚 SUENAGA Fuminao

1974年山口県生まれ。
1999年東京造形大学造形学部美術学科美術Ⅰ類卒業。最近の主な個展に2016年「息づきの絵画」(MAKI FINEARTS、東京)、2015年「アンシャープ」(GALLERY ZERO、大阪)、2014年「APMoA Project, ARCH vol. 11 末永史尚『ミュージアムピース』」(愛知県美術館、愛知)など。
主なグループ展に2016年「トランス/リアル - 非実体的美術の可能性 vol.3 末永史尚・八重樫ゆい」(ギャラリーαM、東京)、2015年「MAKI FINEARTS 5周年企画『 控えめな抽 』キュレーション:末永史尚」(MAKI FINEARTS、東京)、「引込線 2015」(旧所沢市立第2学校給食センター、埼玉)、2014年「開館40周年記念 1974 第1部 1974年に生まれて」 (群馬県立近代美術館、群馬)など。


「掲示」2013年 紙にインクジェット 撮影:柳場大