Google

On the Exhibition Room 展

出品作家:西山 美なコ、小松 敏宏

キュレーション:藤井 匡(東京造形大学准教授)

■会期 2015年3月28日[土]~4月2818日[土] 14:00-19:00 火・水休み

  • オープニングレセプション:3月28日[土] 17:00~ ¥500(1ドリンク付き)
  • アーティストトーク:4月18日[土] 16:00~(参加費¥500) 録画(Youtube)
    西山 美なコ、小松 敏宏、小林 公(兵庫県立美術館 学芸員)、藤井 匡

写真
小松敏宏、プランドローイング

On the Exhibition Room

 

 ボリス・グロイスは「新しさについて」で、キルケゴールのキリスト理解に基づいて、レディメイドのオブジェを考察する。キリストが超越者であるとしても、それを理解できるのはキリスト教が成立した後のことである。当時の人々にとって、イエスは普通の人間の姿をしたもの以外ではない。他の人間との比較には求められない差異を認めることで、イエスはキリストになるのだ。レディメイドのオブジェも同様である。日常生活の中で普通に存在しているものが美術作品と認められる理由は、既存の美術作品との比較からは説明できない。美術館のコレクションとの関係の中に置かれた結果として、そう認識されるのである。
さらに言えば、美術の展示空間もまた、こうしたレディメイドのあり方に似ていないだろうか。日本の小規模な展示空間の多くはビルの一室を転用している。それらは、内装をホワイトキューブとすることで、特定の時間性や空間性を超越した場所として認識される。しかし、ただのビルの一室が特権的な場所として認められるのは、それが展示空間になった結果に過ぎない。内装の形式的な類似ではない。この場所に展示されるものがいずれ美術館にコレクションされる、その可能性によって位置づけられるのである。
 本展では、こうした問いに繋がるアーティストの仕事を通して、展示空間についての再考を試みたい。空間の中に(in)ある美術作品ではなく、美術作品が導く場所について(on)の意識を前景化するのである。小松敏宏は写真を用いた作品によって、壁の向こうに存在している外部の世界を召喚する。西山美なコのウォール・ペインティングは、枠組みをもたないがゆえに、原理的にはどこまでも連続的に展開していく。この二人の仕事が前提とするのは展示空間の自明性ではない。反対に、仮構された純粋性に疑義を呈し、それを社会的で世俗的でしかありえない現実へと引き戻すのだ。そこから、暗喩としての「壁」に覆われているものが見えてくるのではないだろうか。
 その結果は、もしかすると、イエスが同時代人にとって「みずぼらしく卑小な他者」であったのと同じことが起きるだけかもしれない。ただ、そもそも、キルケゴールはキリストを貶めようとしたわけではない。近代的な思考に覆われた世界の中で、再びキリストを回復しようとしたのだ。本展の目的も、美術にまつわる固定観念から自由を回復する道を探すことにある。

小松 敏宏 Komatsu Toshihiro
東京藝術大学大学院美術研究科修了後、ライクスアカデミー(アムステルダム)に於いて制作。1999年 米国マサチューセッツ工科大学大学院修了。MoMA PS1(99年 ニューヨー ク)、クイーンズ美術館(2000-01年 ニューヨーク)、東京都写真美術館(03年 東京)、ウィンブルドン芸術大学ギャラリー(09年 ロンドン)、大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2012(12年 新潟県)、瀬戸内国際芸術祭2013(13年 香川県)、「島からのまなざし なぜ今、アーティストは島へ向かうのか」東京都美術館(14年東京)等、国内外の都市にてサイト・スペシフィック(特定の場所)作品を制作、発表。
西山 美なコ Nishiyama Minako
1965年兵庫県生まれ。京都市立芸術大学大学院美術研究科修了。
主な展覧会
2013年  グループ展:「アートにみる愛のかたち”Love展”」 / 森美術館 / 東京
「瀬戸内国際芸術祭2013」 / 香川
2009年 二人展:「広瀬光治と西山美なコのニットカフェ・イン・マイルーム」 / 金沢21世紀美術館 / 石川
2007年 個展:「~いろいき~」 / 京都芸術センター /京都
「美麗新世界:当代日本視覚文化」
Long March Space / 北京、 広東美術館 / 広州
2004年 個展:「Pink Vacancy」 / 資生堂ギャラリー / 東京