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CAS企画展 「中野西敏弘」展

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中野西敏弘展 -Trip in a Trip- キュレーション:天野一夫

■2001年7月9日(月)〜8月16日(木) 1:00pm-7:00pm 月曜〜木曜 Open (金/土/日/祝は休み)

  • 7月9日 6:00pm- オープニングレセプション
  • 7月14日(土)4:00pm アーティスト・トーク

いずれも会場でカンパ(800円程度)をお受けします。

Nakanosai DM    「Trip in a trip」のために

ここに紹介する 中野西 敏弘 は大方の人々には未知の作家であるだろう。ここ数年ベルリン・ヴォルプスベーデ等ドイツで活動し、昨年末、帰国した作家は、我々の知覚そのものをダイレクトに撃ち、静かにして劇的なある特異な経験を与えるものである。今回は作家にとって関西ではほぼ初めての展観となるが、各位の幅広く深い観賞を期待したい。

中野西は、東京芸術大学在学中から、むしろパフォーマンスを主体にした様々のプロジェクトを試み、その後、1994年にロンドンのゴールド・スミスに留学してからも、一 貫して自らの身体をダイレクトに循環的な世界の現象の中に突き放し、その関係を計測してきたといっていい。そしてそれ以後近年まで、中野西は蓄光塗料を駆使したインスタレ ーション的試行によって次第に知覚そのものの在り方を問うものへと移行してきている。

例えば帰国後に'98年以来、久々に東京で行った今年の個展「Tokyo Art Lover」(秋山画廊・6月)では、荒野をバックに高台に立っている女性の横からの半身像が映されたほぼ同じ構図の画像が、二台の8mm映写機によって左右の壁に交互に映し合った構成であった。一見ほとんど同じ画像を注視するならその異なりに我々は徐々に気付くだろう。二つの画像の女は喜怒哀楽の微妙に異なった表情の差異とバックの光景の僅かな変化に我々の眼差しは釘付けとなりながら、轟音に近い風の音を画像の向きとは 反対のスピーカーから聞くのだ。そして突然女は叫び均衡を取っていた場は破られる。このようにこれまでサイレントであった作品に今回は初めて音を導入し、また明確な関係性を視聴覚的に多重に展開している。二つの画面、そして二つの音、画像と音、二つのものの只中にありながら我々は過剰に感覚をそばだたせようとするだろう。そして突然にフィルムは終わり、数分のスクリ−ンへの注視の後に、我々は不可思議な影像に出会うことになる。この簡明な映像への注視の果ての自らの残像と思われていたものは、なぜか消えることがない。その不可解さの中でわれわれはスクリーンに寄りはじめ、内部的な知覚的現象ではなく、はじめてこれが物質的な現象であることを知るのだ。つまりスクリ−ン自体に蓄光液がここでも塗られ茫洋と光るその幻影に、いま見続けた映像における光の運動の残像がかぶさり、いわば見たこともない光景が立ち現れることとなるのである。

今回はこの東京での展観とは別の新作の展示となるはずである。筆者はまだ未見だが、電車のなかの眠る女がモチーフとなるという。展覧会タイトルである「Trop in aTrip」とは、その女の有り様を意味しようが、そこで鳴る音も含め、幻聴のように聞き揺れつづけるのは(Tripするのは)、実はその不可解な画像を前にした見る側の我々ではないだろうか。美術は手品ではない。素材的な種明かしで済むようなことではなく、その本質的な謎はあなたに滞留したままであるだろう。ここでは、いわば光を媒介 にした日常の具体な光景が、一瞬後にはそのままに冷却保存された触知不可能な記憶の景に奇蹟的に変換するのだ。ここには別段特別のハイテクもなければ、過剰な演出もない。 手法的にはしごく簡明なものだ。しかしながら、初期のパフォーマンスにも通じて、ここでも我々は自らの身体的な知覚・認識が、そのままに突然に蓄光現象という物質のレベルへと接合されて、その圧倒的な位相の異なりの中で、我々はみずからの知覚に揺れをこうむり、今一度静かにそして劇的に新たな計測と再編をうながされることとなるのである。

天野 一夫(京都造形芸術大学芸術学部助教授)

中野西敏弘経歴
1964 福島県に生まれる。
1995 ロンドン大学、ゴールドスミスカレッジ美術学部修士課程修了
1990 東京藝術大学美術学部油画科卒業

■アワード、グラント
2001 Art Scholarship 2001 現代美術賞、優秀賞 
2000

芸術家会館ヴォルプスヴェーデ、バルケンホーフ財団

1999

メッケレンブルク州芸術家会館プルショウ城

1998

財団法人ポーラ美術振興財団

1994 ブリティッシュカウンシル

■個展
2002

exhibit LIVE [laiv](東京)

2001

CAS Contemporary Art and Spirits(大阪)

秋山画廊(東京)
1998 コンセプトスペース(群馬県)
EPHEMERAL MUSEUM Project(東京)
1997

秋山画廊(東京)

1992

秋山画廊(東京)

1991

ギャラリー+1(東京)

1990

秋山画廊(東京)


■グループ展
2002 Sight-mapping, Site-seeing Ei-house(ゲント、ベルギー)

桐生再演8 田島染色工場跡(桐生、群馬県)

LUMINAS / Amplitude of Light 表参道画廊(東京)

2001

数寄者達 琳派以後の方法No.5 臨江閣(前橋、群馬県)

willing refugees ロストック美術館(ロストック、ドイツ)

willing refugees プルショウ城(プルショウ、ドイツ)

2000

数寄者達 琳派以後の方法No.5 プラン展 コンセプトスペース(渋川、群馬県)

Sehnsucht nach Landschaft? バルケンホーフ美術館(ヴォルプスヴェーデ、ドイツ)

1998 曖昧なる境界 影像としてのアート展 O美術館(東京)
ヒロシマ アート ドキュメント'98 旧被服支廠(広島県)
1997 地の力'97 非常勤講師展、東京藝術大学取手校地資料館(茨城県)
WALKING MUSEUM'97 in TAKASHIMAYA TIMES SQUARE 高島屋新宿店(東京)
1996

移項 TRANSPOSITION  カンプナーゲルK3ホール(ハンブルク、ドイツ)

1994

アートフィールドin 津久井(神奈川県)

1993

国際CAC in 津久井(神奈川県)

1990 アートランドスケープ(福島県)
1989

アートコンタクト展(長野県)

東京サナトリウムプロジェクト(東京)
PURE'89(大阪)
1988 ニュースピリッツ展(福島県)
美術栽培(東京)
1987

ニュースピリッツ展(福島県)


■舞台美術
1989

別の空 テルプシコール(東京)

1986

ワルツプロジェクト 東京芸術大学音楽学部大ホール(東京)


■パフォーマンス
1993

Breathing 会津高原アートカレッジ(福島県)

Breathing アートアーキテクチュア 京都大学西部講堂(京都)

1992

濾過 Diet/Gallery SAGAK(ソウル、韓国)

発熱点 CACin ヒノエマタ'92(福島県)

1991

余熱 プロトシアター(東京)

自己同一性 武蔵野美術大学(東京)

濾過 パフォーマンスフェスティバル in ヒノエマタ'91(福島県)

自己同一性 テルプシコール(東京)

1990

Night Concert キッドアイラックアートホール(東京)

二重拘束 パフォーマンスフェスティバル in ヒノエマタ'90(福島県)

シナプス Plan B(東京)

1989

シナプス 国民文化祭'89(埼玉県)

シナプス 現場展'89(福島県)

Brain Weather テルプシコール(東京)

壁 横浜美術館前広場/横浜EXPO'89(神奈川県)

水面 テルプシコール(東京)

1988

濾過 テルプシコール(東京)

本ページは当時のデータをもとに誤字脱字等を訂正し再製作したものである。


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