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CAS企画展 銅金裕司展

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銅金裕司展 
キュレーション:天野一夫(O美術館キュレーター)

■会期 2000年1月14日(金)〜2月19日(土)
1:00pm-7:00pm 水曜〜土曜 Open (祝は休み)

  • オープニングレセプション:1月14日(金) 18時〜
  • 対談 銅金裕司 vs.天野一夫:1月15日(土) 16時〜
  • ワークショップ:1月30日(日) 16時〜
  • エンディング・セミナー:2月19日(土) 17時〜

東京でも同時期開催 銅金裕司 展 2000年1月11日(火)〜29日(土)
SOL 〒162-0042東京都新宿区早稲田町74簑作ビル1F TEL&FAX 03-3203-8646

Photo     巷にはエコロジーと言いつつも、ほとんどが人間中心の視覚専制性の範疇を一歩も出ることのない、自足した「美術」は枚挙にいとまがない。

 そのようななか、海洋工学を学んだ後、ランを中心とした植物の研究・指導にたずさわっている銅金裕司はいずれの場から見ても特異な立場から、注目すべき試行を重ねているようにおもわれる。

 銅金は植物の葉等の表面に流れる微弱な電位変化を測定し音に変換する「エコロジカル・プラントロン」というシステムを開発し、`94年頃から画廊を始めとしたさまざまの場で展示を試みてきている。作家によれば、その変化は人間と同様、植物の生理・生態と関連したもので、脳波のように、秒・分単位でリアルタイムで変化するものであり、種によれば、高度な情報処理さえ見せることがわかったという。

 人が近づくなど、周囲の環境に対し微細に変化しつつ、またその種類や場でそれぞれ個性的な振る舞いを見せる植物。そこではこれまでの我々の単なる視覚のみによる、一方的かつ専制的な享受の仕方へ再考を迫るだろう。植物という生態を分析する事のみでは判明しない本質を、ある関連の下で明らかにしていくことで、我々は生きるということ、通常は意識し得ない複雑な生への場へと立ち至らせる。本来アートとは我々の日常をずらし、ある覚醒の場へと導くものであるとするならば、このような試行とは、優れてアーティスティックな営為であるだろう。

 今回は関西に在しながらも、比較的東京で発表が多かった銅金の貴重な機会となる今回の展示は、東京と同時開催による新たな展開となる予定である。

天野一夫


MetalPlate Plantron

生命の析出する海辺・・・世界のあなたの欲求が 「私」の表現になることについて

銅金裕司

地球上の固有な環境やその変容はそれに見合った生命世界や生物を生みだす。た とえば湿地帯への適応におけるタヌキモやウツボカズラなどの食虫植物、ゴンド ワナ由来のカモノハシあるいは有袋類、魚の陸進における魚サイドから展開した ネオセラトゥダスなどの肺魚から両生類へと連動するマッドパピーやサイレン 、あるいはまた、ついには陸上生活に見切りをつけ充足生活の天国的展開とも思 える鯨たちの海進と海洋世界での鯨類心理における休息問題と夢想空間。重力と 大気という現実的アフォーダンスに「着生」という奇襲戦略をもってアンビエン トで希薄な炭酸ガス気相空間を疑似海洋に見立て、太古はそうであったに違いな い海草のような体質と体型を再現し、さらに樹上に陸上化してようやく機能回復 に成功したランの仲間など。

さらには、ちょっと変わったところでは人の審美観 の発生(どうして花を愛するか?)とか世界の欲望を人間が代わって実現すると いう歴史をここにトピックとして加えてもいいかもしれない。生命は有限だが 、やがて悠久の時間を刻みつつ時間を展開して、唯一無二の形式を環境世界に皺 や襞のように折り畳んでゆく。このような皺や襞がつまった環境世界を生命曼荼 羅と呼ぶことにしよう。つまり、生命曼荼羅という環境世界の皺か襞をつまんで 裏返す過程で固有な生命世界と生物を析出することになるだろうし、いっぽうで ごく固有な生命を裏返すことが生命曼荼羅界に分離作用を及ぼすことである種の クライシスを引き起こし、たとえば土に還ることや魂が抜け出すことになって 、やがて、生命曼荼羅はユングの云うような無意識の力動性やシンクロニシティ をともないつつ、そのベクトル場に生物の自律性や固有性を浮かべることになり やしないか。これらの生命曼荼羅の皺と襞が生命の次元に流れ込み無機物を越え た有形・無形な析出過程や時間展開がオートポイエーシスというシステム的思考 でつながり合うだろうとは最近予測されているところだ。

一方、この現実に即し て地球上でのさまざまな在り方がその次元のアフォーダンスという物理的支柱で 定義付けされるが、というわけで、プラントロンが植物を介在させたこれらの生 命の多次元多様体と生命曼荼羅にさまざまに互いに横断するインターフェイスで あることについてを私は考えてみたいのである。いっぱんに「環境」と漠然と呼 ばれるこの現実世界とそれへの想起の曖昧さのために、ベイトソンや熊楠らの精 神(マインド)から生まれる生命曼荼羅という環境への連鎖や生命世界への没入 的内部観測的切り口については、結局、今後、新しい価値観や定義を見出してゆ くしかない。

作品画像

そう、ただ、生きることを「考察する」ことは難しいということだ 。だから考えないほうがいい?そうもいかないのが人間の美徳であると私は思う 。生命のシステムは自律性を備えて、生命が自己組織化する能力によって生命曼 荼羅界のそれぞれの系で固有性が維持され、次元を越えた表象化作用が保証され るだろう。だから、生物は物質に還元されそうに思えるし一見「生命」というよ うな特性を帯びるかのような印象を受ける。

オートポイエーシスではこれらの系 は自己の境界を産出のネットワークの中から自らで決定しつつ流動的でその境界 はここの空間にもともとあったような形では表象されない。接続する生命曼荼羅 界の内部に降り立ち、生命システムが生命の場との境界をどのようにして自分自 身で画定し創出するのか。生命の場であるこの現実の世界との関係をどうやって 自分自身でつくりだせるのか。世界がアフォード(提供)する存在の在り方をシ ステム自身との関係で明らかにしてゆく固有性の議論がオートポイエーシスなら ばプラントロンは生命の場に異なる次元の穴を内部である生命曼荼羅界から直接 、唐突に穿つだろう。

生命曼荼羅という世界の欲望、それが「あなた」である他 者の欲望となり、別の他者に働く。人は世界あるいはだれかに代わってその欲求 を実現するのである。ときには精神(マインド)やバーチャル世界においても力 動性を与えるかもしれない。だから現実的アフォーダンスの有り様もそこでは無 効になるということか。これはすごく現代的な意味での自然と生命への不意打ち になり得る。ただ、こういう仮想な手練手管もその生物の現実的な思わぬ能力を 引き出すこともあると私は考える。一方、私たちのここで共有したり共感したり することが、たとえばプラントロンを経由しつつ生命曼荼羅に影響を与え、自然 の内部に入り込んでその一部となり、生命世界の個別性が空間的外部に仮に表象 され、その個体の延長上の位相空間に生命曼荼羅が存在する可能性。心がやがて 現実世界を生み出すことになる。

今回の展示ではアルミ板を十時においた。これは(植物の重要なアフォーダン スである方位)東西南北を示す。十字架ではない。そこで誰かと私がガーデンニ ングを試みたというわけだ。アルミ板の伝導性でプラントロンの電気的効果は全 面で共有することになるであろう。すべての植物が繋がっている。一方、誰かが やったように見えるが、これを「私」の作品でないと言えるであろうか?ならば 、いったいこれは誰の表現であるのか?みなさんにお聞きしたいところである。 プラントロンは私たちの自然への参加性をもってその延長上に現実の生命の場と それへ互いに連動する生命曼荼羅界を通底して、今度こそ人の自然への新しい感 性や判断も生みだすことになりやしないかと日々考えている。

ワークショップ MetalPlate Plantron

2000年1月14日(金)6:00pm- ガイダンス
130日(日)4:00-6:00pm ワークショップ

参加費としてカンパをお受けします。要予約。 1月30日のワークショップに参加の方は14日のガイダンスに参加されることが望まれます。 いずれも会場はCAS(下記)
  • ガーデニング
    金属板に土を盛ってガーデニングする。その植物からのデータでプラント ロンで音響化する。
  • 植物の声を聞いてみる
    どのような性状かをプラントーンによって調査する。
  • 物語
    その風景を前に何か置き物をして、お話をしてもらう(事前に準備する) 以上のビデオ(機材用意)を撮影して、それも展示します。 一般にワークショップと展示そのものとは切り離されますが、ここではワークシ ョップ内容が展示に直結して、だれかに見てもらうこと、を考えてゆきます。
  • 参加者の用意
    1. 置き物 (人形、おもちゃ、装飾グッヅ、思い出の品など)
    2. お話(物語、置き物の由来など、人形劇、パフォーマンス、歌唱・漫才とかの芸能一般もOK)
    3. 葉・茎がしっかりした小さな植物
本ページは当時のデータをもとに誤字脱字等を訂正し再製作したものです。

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Last Update 2006/10/1017:23:51