CAS企画展 TSUJI Kazumi

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辻和美展に寄せて 作家からのコメント

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私の作品はいつも私自身が日常生活を送りながら日々触れるもの、感じることをベー スに制作されています。私にとって作品は、自分自身を映し出す鏡のようなもの(思 想)であり視点です。できた作品は、実は二次的なモノですが、実際に制作行為をし てこそ見えるもの、それなしには見えないものがあると考えます。

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現在、私は、自分のフィルターを通した“現代における歪み”を制作のテーマにして います。第二次世界大戦後、猛スピードでアメリカの豊かさに追いつき追い越すこと が私たちの父母の目標でした。しかし、どうでしょう?一見、豊かに思えるこの国 [日本]の未来への不安はどこから感じられるのでしょうか。有り余るジャパニーズ マネーの裏で、しらけた、甘えた、病んだ子供たち。冷めた心が行き場を探していま す。大人になりきれない、なりたくない同世代たちが犯罪を犯罪として認識できない。 毎日の生活の中における自然な差別、それも結局、愛の不足か。癒しを求めて現実逃 避。安全に見える私たちを取り巻く環境への危惧。平凡な日常と非日常が表と裏に存 在する・・・。

そして、この全てが自分自身のどこかに当てはまる。

at CAS

最近、私は、自分自身のなかに、現代の歪みのある一部を発見しています。私は、自 分に嘘をつきながら生きています。それが、自分自身を社会の何か見えないプレッシ ャーから唯一守ってくれる手段だと学習してきたからです。 人から好かれたい、良い子と思われたい、ほめられたい、怒られたくない。 人間としての自分の個性よりも協調性を大切にする日本の持つ思想から私は逃れるこ とはできません。そしてこれからも、この国で生きていくのです。

制作することは、私にとって、現実との葛藤であり、現実からの逃避です。しかし、 そのことにより私の精神はバランスをとり、本当の自分自身に戻ることができます。

辻和美


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Last Update 2003/07/0817:29:28